徐脈
循環器内科が教える「徐脈(脈が遅い)対策大全」――脈が50回を切ったら? 原因・検査・治療・セルフケアをまるごと解説
大まかな症状の分類
| 分類 | 典型的心拍数 | 主な循環器的背景 | 症候のイメージ |
|---|---|---|---|
| 生理的徐脈 | 40〜59回/分 | スポーツ心臓・迷走神経優位 | 無症状・運動能力高い |
| 洞不全症候群 | 30〜50回/分 | 洞結節機能低下 | 安静時も運動時も遅い |
| 房室ブロック | 20〜45回/分 | 電気信号が心室へ届かない | 脈抜け・失神 |
| 薬剤性徐脈 | 30〜55回/分 | β遮断薬・Ca拮抗薬など | 服薬後に息切れ |
| 代謝性徐脈 | 40〜60回/分 | 甲状腺機能低下・低体温 | むくみ・寒がり |
大まかな症状の分類の詳細説明
- 生理的徐脈
マラソン選手に多く、一拍で大量の血液を送出できるため症状はほぼ皆無。 - 洞不全症候群(SSS)
心臓の最初のペースメーカー細胞が老化や虚血で弱る。安静でも50回以下、歩行中にも脈が上がらず息切れ・めまいが出現。 - 房室ブロック(AVB)
電気が心房→心室に伝わる途中で遅延・脱落。2秒以上の停止でアダムス-ストークス発作と呼ばれる失神を起こす。 - 薬剤性徐脈
降圧薬・抗不整脈薬・睡眠薬が効き過ぎるパターン。薬歴を医師に提示すれば調整のみで改善可能。 - 代謝性徐脈
甲状腺ホルモン低下や低体温で全身代謝が落ち、拍動もゆっくりに。むくみ・体重増・寒がりを伴うのが特徴。
症状の詳細説明
- 脈拍50回未満+息切れ:心拍出量↓で脳・筋肉が酸欠。
- 脈が抜ける/ドーンと強い一拍:房室ブロックで心室が“代償拍動”を打つ。
- 早朝・睡眠中に40回台:迷走神経優位または薬剤ピーク。
- 失神・めまい・ふらつき:脳血流が瞬間的に減少。舌を噛む・転倒外傷を伴えば危険度大。
こんな症状があったら注意!受診のサイン5選
- 歩行中でも脈が50回未満
- めまい・失神を伴う遅脈
- 胸の違和感と脈欠落
- β遮断薬内服中に息切れ
- 家族にペースメーカー装着者
応急処置5選
- 横になり足を30 cm挙上:脳血流を確保。
- 襟・ベルトを緩め深呼吸:交感神経を刺激し一時的に心拍↑。
- 冷たい水を30 mL:交感神経刺激で洞頻拍を誘導。
- 脈が30回未満で意識低下→119番:心停止への移行防止。
- 薬剤性が疑われたら服薬を追加で飲まない(中止は医師確認後)。
セルフチェックリスト
- □ 安静時心拍 <50回/分が3日以上続く
- □ 階段で息切れ・目の前が暗くなる
- □ スマートウォッチで“心拍停止3秒以上”表示
- □ 服薬:β遮断薬/ジギタリス/抗不整脈薬
- □ 家族歴:ペースメーカー・突然死
症状注意事項
- 失神歴がある場合は運転・高所作業禁止
- ジムでのハードトレーニングは医師許可後
- 甲状腺疾患・電解質異常は早急に是正
- 強い咳込み・いきみは迷走神経反射で悪化
受診前にメモしておくこと5選
- スマートウォッチ心拍グラフ(PDF可)
- 服薬一覧と最終内服時刻
- 失神・めまいの日時・状況・持続秒数
- 家族の循環器疾患歴・突然死歴
- 体温・血圧・体重の1週間連続記録
診察の流れ
- WEB問診 → 受付
- バイタル&12誘導心電図(5分)
- “30分パッケージ検査”
・血液:TSH・電解質・薬物濃度
・心エコー:心筋症・弁膜症除外 - 結果説明→治療オプション提示
- 必要に応じ24hホルター
当院でできる検査
- 12誘導心電図
- ホルター心電図
- 心エコー
- 血液:BNP・TSH・薬物濃度(β遮断薬・ジギタリス)など各種
- 胸部単純レントゲン
治療方法
| 原因 | 初期治療 | デバイス/外科 | 生活指導 |
|---|---|---|---|
| 症候性洞不全 | β刺激薬点滴 | 永久ペースメーカー | 毎日脈拍測定・脱水予防 |
| 高度房室ブロック | 一時ペーシング | 永久ペースメーカー | 過労・飲酒を避ける |
| 薬剤性 | 投薬調整・拮抗薬 | - | 自己中断禁止、定期血中濃度測定 |
| 甲状腺機能低下 | レボチロキシン補充 | - | 体重管理・適度運動 |
| 生理的徐脈 | 経過観察 | - | 年1回心電図・エコー |
F&Q
脈が50回でも運動して良い?
無症状・心エコー正常ならウォーキングは可。競技レベルは医師相談。
ペースメーカーを入れたらスマホや電子レンジは?
22 cm以上離せば問題なし。逆に磁石付きネックレスはNG。
β遮断薬をやめれば脈は上がる?
多くは上がるが、突然中止は反跳性高血圧・頻脈を招く。医師が段階的に減量。
高齢で脈が40回台=寿命?
症候性ならペースメーカーで生活の質を保てる。年齢だけで諦めないで。
再発防止策
- 毎朝・就寝前に脈拍チェック(目安50〜90回)
- 水分1.5〜2 L/日+適塩で迷走神経反射防止
- 薬の飲み忘れ防止アプリで血中濃度の乱高下を防ぐ
- スマートウォッチで心拍トレンドを共有(オンライン診療対応)
- 年1回の心電図+エコー+血液検査で早期変化を察知
まとめ
徐脈は“静かな心臓のSOS”。
脈が遅いだけでも、失神・めまい・息切れがあれば危険度は急上昇します。
ペースメーカーが必要か、薬の調整で済むか――医師がエビデンスに基づきご提案します。
「脈が遅いけど様子見で大丈夫?」――検索を閉じる前に、専門検査で未来を変えましょう。
スマホから15秒で予約完了。検査・説明・治療までワンストップの当院が、あなたの安心と安全な日常を全力でサポートします。
