「数日前に焼き鳥や鶏刺しを食べてから、急に激しい腹痛と高熱が出た」 「お腹を下してしまい、市販の薬を飲んでもなかなか治らない」
このようなつらい胃腸症状にお悩みではありませんか? 鶏肉や内臓(レバー)などを生、あるいは加熱不十分な状態で食べた後に発症する食中毒の代表格が「カンピロバクター」です。カンピロバクターは、日本の細菌性食中毒の中で最も発生件数が多い原因菌として知られています。
この食中毒の厄介な点は、「食べてから症状が出るまでに数日間のタイムラグがあること」と、「適切な対処をしないと重症化や後遺症のリスクがあること」です。
今回は、カンピロバクター食中毒の特徴、潜伏期間、注意すべき後遺症、そして医療機関を受診する目安について内科医が詳しく解説します。
カンピロバクター食中毒の3大特徴
カンピロバクターは、主にニワトリやウシなどの家畜の腸内にいる細菌です。他の食中毒菌と比べて、以下のような際立った特徴を持っています。
非常に少ない菌量でも発症する
一般的な食中毒菌は、食べ物の中で大量に増殖しないと発症しません。しかしカンピロバクターは、ごくわずかな菌(数百個程度)が体内に入っただけでも感染・発症するほど強力な感染力を持っています。そのため、新鮮なお肉であっても、菌が付着していれば十分に食中毒を起こす可能性があります。
潜伏期間が「2〜5日」と長い
多くの食中毒は食べたその日〜翌日には症状が出ますが、カンピロバクターの潜伏期間は「2〜5日(平均2〜3日)」と長いのが特徴です。そのため、症状が出たときには「数日前に何を食べたか」を忘れてしまい、単なる風邪や胃腸炎と勘違いしてしまうケースが少なくありません。
市販の下痢止めが病状を悪化させる
下痢は、体内に侵入したカンピロバクターやその毒素を外へ追い出そうとする防御反応です。ここで自己判断により市販の下痢止め(止瀉薬)を飲んでしまうと、菌が腸内にとどまり続け、毒素が血液にまわって病状が悪化したり、回復が大幅に遅れたりする恐れがあります。
主な症状と注意すべき「後遺症」
カンピロバクターに感染すると、主に以下のような症状が現れます。
風邪のような発熱から始まり、その後、激しい腹痛と下痢が追いかけてくるケースも多く見られます。
稀に起こる重篤な後遺症「ギラン・バレー症候群」
カンピロバクター食中毒で最も警戒すべきなのが、下痢や発熱などの急性期症状が治まった「数週間後(1〜3週間後)」に発症することがある「ギラン・バレー症候群」という神経の病気です。
自己免疫の異常により手足の筋力が低下する病気で、以下のような症状が特徴です。
カンピロバクターに感染した人の数百人〜数千人に1人の割合で発症すると言われており、万が一これらの違和感を覚えた場合は、直ちに専門の医療機関を受診する必要があります。
自宅での応急処置と、医療機関を受診すべき目安
軽症であれば、適切な水分補給を行うことで1週間ほどで自然に軽快することもあります。しかし、先述の通り下痢止めは服用せず、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ摂取して脱水を防いでください。
以下のような症状が見られる場合は、重症化や合併症を防ぐために、我慢せず速やかに医療機関を受診してください。
医療機関での治療について
問診で数日前の食事内容(特に加熱不十分な鶏肉の摂取歴)を確認し、便の検査等で診断を行います。
治療の基本は、脱水を改善・予防するための点滴や、腸内環境を整える整腸剤の処方です。カンピロバクターであることが強く疑われる場合や、症状が重い場合には、病期を短縮し治療を早めるために、効果のある「適切な抗生物質(抗菌薬)」を処方します。
まとめ
カンピロバクター食中毒は、数日前の食事が原因となるため自己判断が難しい疾患です。しかし、激しい腹痛や高熱、長引く下痢がある場合は、適切な治療を行うことでつらい症状を早く鎮め、重症化のリスクを抑えることができます。
「数日前に焼き鳥や肉料理を食べた」「お腹の風邪にしては痛みが強すぎる」と感じたら、放置せずにお気軽に当院までご相談ください。